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Posted: 5 Nov, 2022 @ 11:33pm
Updated: 26 Nov, 2022 @ 10:04pm

これはVitoria3というゲームであってVictoriaIIの正統後継者ではない

何度か遊んでうんざりしてきたのでマイナス評価にします

複雑な外交は19世紀に限らず近代ヨーロッパ史につきものであり、近衛文麿は「欧州の情勢複雑怪奇」などと言って外交に失敗したくらいのものだが、Victoria3の外交は複雑というより「乱雑」といったほうがいいように思えてきた。
たとえば同盟が意味を成さない。AIは同盟を実に簡単に破棄する。自国が戦争を始めると、それがたとえアジアの小国に対するものであっても簡単に破棄する。同盟破棄のペナルティはなんらないようである。しかも同盟を破棄するだけならともかく、敵国に懐柔されて、戦争の開始と同時に同盟を破棄してから外交プレイの間に敵国の味方についてこちらに戦争を仕掛けてくる。
いくら欧州の外交が複雑なものであるといわれるものであったとしても、この手軽な同盟破棄は嫌になってきた。
ついでに言うならゲーム序盤は同盟は一つしか結べず、その後技術開発で複数の同盟を結ぶことができるのだが、そもそも1836年時点でロシアのアレクサンドルによって神聖同盟と呼ばれる五国間同盟が結ばれていたはずである。無論再現されていないが。

上陸戦とその後の戦線の拡大の理不尽さにもうんざりする。
そもそも上陸戦がどういうシステムで行われているのかよくわからない。簡単に上陸できることもあるが上陸できないときは何度挑戦しても上陸できない。しかもそれがどういう理由によって勝敗が決まっているのかわからない。
それから、上陸戦に限ったことではないが、このゲームではステートの境目や参戦国によって戦線がやたら細々と複雑に分かれることがある。例えばある国に上陸が成功したとして、一軍団のみが戦線を構成できるのだが、敵に同盟国がいたりして戦線が複数生まれると、いくらこちらが列強の軍団でも2つ目の戦線には一兵も割くことができず、敵本体に対してどれだけ圧倒的であっても他の戦線には軍を割けず(ヨーロッパから20日かけて運ばないといけない)、戦線が消滅して負けてしまう。上陸戦が関係なくとも戦線が細々と分かれるとそこに配置する軍団がなければそこから敵が無人の戦線を突破してくる。

世界市場というものが存在しないに等しい。技術開発を続けていくとアヘン(医療用)やゴム、石油などが必要になってくるのだが、「世界市場」にはほとんど流れてこない。結局中央アフリカのゴムやら東南アジアのアヘンなどは戦争をして直接統治したほうが良い。石油については多分全世界の油田を抑えても需要を満たせない。

民衆の急進化が止まらない。全国民(POP)の要求を満たせないのは当たり前なので、いずれかの階級を優遇したら他の階級が急進化して文句を言いはじめる。それ自体は非常に19世紀的でありVictoriaならではのゲーム性ではある。しかし一体誰がどうして不満を起こしているのか、よくわからない。後半になればなるほどよくわからない。それに一度急進化したPOPはほとんど元に戻らない。税金を上げると急進化したPOPは増えるし、減らせば急進化したPOPはある程度減るが、後半になると税率を最低にしてもPOPが急進化して、マップ上の都市は赤く光って無政府主義の旗がはためくようになる。

結局ドイツはどう作るものなのかよくわからない。何度かプロイセンで遊んだが、運の要素なのかなんなのかよくわからない。ドイツが成立するにせよそれに失敗するにせよ、何故そうなったのかよくわからず、納得感がない。

以上、なんかこのゲームをやっていてうんざりしたところである。どの要素も納得感がない。


パラドゲーとして勧められるかと言われると迷う。少なくともこのゲームはVitoriaIIの正統な後継者ではないし、Paradoxの歴史ストラテジー…CK、EU、HoIなどと連綿としてつながっているかというとそれも疑わしい。無論これらのゲームは異なったシステムを持つが、それでもこのVic3は一連のパラドゲーと比して違和感がある。直系の子孫という感じがしない。せいぜいVictoriaIIの姪といったところか。
単体としては楽しいが、どうも「パラドゲーとしては」と限定するなら勧めるのをためらう。

基本的には19世紀のヨーロッパで工場を建てたり鉱山を掘ったり農場を拓いたりして経済を豊かにして、余った金で軍を育成したりするゲームである。外交もある。そして植民地から搾取できる。

既存のパラドゲーと比べると異例なことに、最初からお金がたくさんある。国庫が潤沢である。しかも国によっては最初からかなりの黒字だったりする。
そしてその割と豊かなお金で工場を建てたり鉄道を敷いたりする。文明国なら最初からかなり自由に工場を建てたり資源を増やしたりできる。
そんなわけだから内政好きにはいいゲームになるだろう。
しかし工場一つや発明(に伴う工場や資源の改善)一つでのインパクトは…歴代Victoriaと比べると派手ではないように感じる。いや、過去作にしがみついているということなのかもしれないが、最初に自国に工場を新しく建てたときのようなインパクトはない。収入の増加とかそういう数値の問題ではなく、いわゆるセンス・オブ・ワンダーの問題とも思える。
だいたい、最初から日本や清でも、種類は幾らか制限されているものの工場を建てられる。日本の場合は数年かかってしまうが、清の場合は数週間で建てられる。一件だけだが。ヨーロッパ諸国なら数週間で複数の工場をかなり自由に建てられる。工業部品が最初英国でしか生産されなかった初代とは大違いである。

そもそもVictoria3には「文明国」と「非文明国」という違いがない。「列強と承認国」と「未承認国」という分類になっている。非承認国は列強によって外交(もしくは戦争)によって認められる必要があるらしい(まだ欧州諸国でしかプレイしていないので詳しくわかっていない)。
つまりこれまでのVictoriaシリーズで非文明国にとっての悲願「文明開化」というのが特にない。未承認国は技術開発や施設建設を通じてシームレスに「文明化」していく。「文明開化」という大きなイベントが特にない(らしい)。実際、アフリカのソコトとかを1900年頃に征服してみると、そこには工場だけではなく発電所まであったりした。
実際には識字率や閉鎖主義的イデオロギーなどでそう簡単にヨーロッパ諸国に追いつけるわけではないが、技術開発も「未承認国」であってもそこそこの速度で進む。さすがにかなり限界はあるようだが、プレイヤーが操作すればおそらく欧米並みになるのだろう。
確認していないのでなんであるが、どうも「明治維新」のイベントも存在しないようである。日本はいつまで経っても「日本幕府」のままであり、1900年とかになっても元首の徳川威仁は束帯姿のままである。そもそもアジアやアフリカなどの文明化して洋服を着るというようなシステムそのものがない。
ついでながら日本の識字率は史実と大きく異なり、たった22%程度しかない。実際は70%近かったと言われているのだが、周辺の清や朝鮮となんら変わらない。まあロシアは史実通り19%とかなのだが。

ヨーロッパ諸国でプレイしていても、イベントなどに物足りなさを感じる。だいたい、「民族的建国」イベントがドイツとイタリアにしかない。

プロイセンで遊んだのでドイツのケースを解説する。
プロイセンでドイツを建国しようとすると、「北ドイツ連邦結成」のイベントはある。ただこれは、技術開発で条件を満たすと自動的にイベントが解禁され、北ドイツの諸邦がなんのタイミングか不明のタイミングで勝手にプロイセンに合邦するというものである。しかも北ドイツ全土が合邦されるわけではなく、ある程度合邦するとイベントが終了してしまい、幾つか小邦が取り残されてしまう。取り残された分は次の「ドイツ連邦結成」イベントでだいたい回収できるのだが、内容的には北ドイツ連邦結成イベントと同じである。違いは南ドイツの諸邦が合邦してくるかもしれないところである。このイベントも幾つかの諸邦を取り残したままイベントは終わってしまい、国は北ドイツ連邦のままである。
ここで文化項目の民族タブを開くと「ドイツ建国」というのが現れて、ようやく「ドイツ」が建国できる。この時、小ドイツ主義の場合、つまりプロイセンでプレイしている場合、小ドイツ主義を支持する諸邦はドイツとして合邦するのだが、支持しない諸邦は合邦しない。バーデン一国が支持していない場合、バーデンだけがドイツの中で独立国として存在し続ける。
そしてプロイセンでの「ドイツ建国」イベントだが、オーストリアやフランスと、ついでにデンマークとも戦争をしなくてもドイツを建国できる場合がある。エルザス=ロートリンゲンやシュレースヴィヒは戦争で手に入れる必要があるのだが、いらなければそのままでもいい。ヴェルサイユ宮殿の鏡の間でドイツ帝国万歳三唱ができないのである。実績は解除されるが。
ただしオーストリアがゴネたり諸邦の意思統一ができていないと戦争になる。その場合はオーストリアなどといった列強と大戦争をすることになる。

ヨーロッパを巻き込んだ「諸国民の春」もイベントとしては存在しない。たしかに1840年代後半から自由主義が盛り上がってくるのだが、1848年になにかあるわけでもなく、なんというかだらだらした感じが否めない。

19世紀という革新の時代にあって時代に特徴的なものである「技術」については、まあヨーロッパ諸国であれば普通に開発できるわけだが、上述の通り「ジェニー紡績機で生産量150%上昇!」「哲学の発明で技術ポイント100%上昇!」みたいな派手さはない。
そして技術開発はある程度早く進んでしまい、1870年頃にはもうボルトアクションライフルや機関銃が実用化され、1890年には飛行機が飛び空母が配備される。


大きく変わった戦争、それなりに複雑な外交?

Victoria3で大きくオミットされたのが戦争である。今までのようにマップ上に兵士や軍艦がいてそれらのユニットに指示を出したりできない。軍隊はあるが師団と呼べるようなものもない。
あるのは戦線と海域だけで、そこに国に幾つかある軍団をどれだけ投入するか、海軍は敵と比べて優勢かどうか、それだけである。
もちろん戦争のシステムは兵士の数や兵器の質で色々計算されて決定されるのだが、プレイヤーがすることはどの戦線にどれだけ軍団を投入するか決めるだけである。
海軍も似たようなものだが、残念なことに、陸戦以上に重要性が高いとはいえない。ブリテン島に上陸するのでもない限り、半分無視してもあまり困らない。また空母があると上述したが、空母という艦船そのものは配備できるわけではない。あるのは大量のドレッドノートだけである。

一応国力や技術などに沿って戦争は行われるのだけれど、まあ、味気ないと思う人は多いだろう。私個人はHoI4でも軍団のAIに丸投げしがちなのでそこまで残念でもなかったが。
余談ながら、ドイツを建国したのでエルザス=ロートリンゲンをフランスから奪おうと思って戦争をふっかけたのだが、こちらにロシアが同盟国として存在していたからか、フランスは戦争勃発前にエルザス=ロートリンゲンから撤退してしまった。

ここまで書いていなかったが、今回は戦争勃発の前に外交的な事前折衝が行われるのが特色である。こちらは多少面白いもので、色々な列強が介入してきたりこなかったりとプレイの幅が広がる。まあ、アジアで戦争をするとほぼ100%清が介入してきて敵の兵数だけは膨れ上がったりしがちだが。

そういうわけで外交はそれなりには面白みがあるかもしれない。といっても基本的には「敵の敵は味方」「味方の敵は敵」といった関係性で構築されるのだが。列強諸国が複雑に絡まるとなかなか厄介なものになることもある。まあ、ヨーロッパの列強同士で戦う必然性はそれほどない気もするのだが。


AIの混沌ぶりはEU3最初期の如し

Victoria3の大きな特徴としてまた一つ挙げるとしたら、AIの混沌ぶりである。イベントやディシジョンのせいも(それらが未発達なせいも)あるかもしれないが、時代が進むとかなり滅茶苦茶な地図になりがちである。
まず今回はVictoriaIIの最初期のように植民に距離の概念がないのだが、アメリカ合衆国がモンロー主義の欠片もなく、アフリカにかなり前向きに入植してくる。アフリカにアメリカが巨大な植民地を築くこともしばしばである。距離の概念がないのでプロイセンでもアフリカだけではなくアジアにも行けるのだが。植民地で日本に関係があることといえば、北海道(というか蝦夷地)の旭川から北が正式な国家ではない、植民可能なアイヌモシリなので、北海道の北半分と樺太はたいていイギリスとかの植民地になっている。お陰で日本人ユーザーがそれを防ぐMODを真っ先に開発していたりする。

アメリカについて言えば、南北戦争は起きるようになっているのだが、これがほとんどアメリカ連合国有利に展開する。アメリカ合衆国がアメリカ連合国に追いやられて列強の座から転落し、西海岸に張り付いていることが多い。

ヨーロッパはあまり大きく変化しないとは書いたが、ドイツとイタリアの建国はまた別である。それから、私の場合ほぼ100%スウェーデンがデンマークを飲み込んでスカンディナヴィアを建国している。
そしてイギリスがぱっとしない。やる気がないんじゃないかと思えるくらいである。逆にフランスが妙に強い。史実19世紀のフランスはナポレオン戦争の影響で出生率の低下に悩まされるのだが、そんなことは物ともせず、列強一位になっていることが多い。まあ、前述の通りエルザス=ロートリンゲン取ろうとしたら尻尾を巻いて逃げたりはするのだが。ちなみにフランスではなんの政変も起きないようで、20世紀になってもオルレアン朝が続く光景を見かける。


ローカライズの質について

まず日本でリリース当初Victoria3に多量の不評レビューがつく元となった日本語訳が英訳になってしまうバグ(?)だが、私の環境ではまったく起きなかった。起きる人と起きない人と完全に分かれるようで、別に誰もが起きるわけではない。

日本語訳の質は、なんというか「がんばったで賞」程度のものである。「平八郎オシオ」(大塩平八郎のこと)みたいな可愛らしいものもあれば、軍部とでも訳すべきところを「武装勢力」と訳されて一瞬ギョッとなるようなものもあるし、軍艦のことを「補給艦」と表記してあってそれなりに混乱するのもある。欧米の名前もフランスのオルレアン朝フィリップ王が「フィリッペ」となっていたりとあやしいのが散見される。
しかし東アジア人やマジャル人の名前が一律に「名前・姓」になっていて日本幕府の元首が「家斉徳川」とかになっているのは、もう多少は頑張ってほしかったと思うものである。


一応お勧めはするけれどパラドゲーとしては微妙

というわけで結論づけるなら、一応お勧めはする。内政好きには遊べるとは思う。
ただし、累代のパラドゲーとしては完成度が問われる。
アメリカがアフリカに巨大な植民地を持っていたり、日本が明治維新が起きないためにいつまで経っても日本幕府で束帯姿の徳川将軍に支配されているとか、である。清もイベントというか条件があって崩壊したりするはずなのだが、最後の方まで愛新覚羅朝が支配している。
EU3がそうだったように、これから大量のDLCが出て改良されるのであろうが、今は「正統なVictoriaIIの後継者」とはとてもいえない。
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