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Posted: 21 Jan, 2022 @ 3:39am
Updated: 1 Apr, 2022 @ 9:37pm

これはメンヘラ女の戯画(カリカチュア)に過ぎないのか?

リストカットの描写がおかしいことにまず大きな違和感を覚えた。
メンヘラゲームだからリストカットは当然のごとく出てくるわけだが、明らかにおかしい。リアリティがゼロである。
というのはこのゲームで主人公の「あめちゃん」は追い詰められるとリストカットに及ぶのだが、自分で切らないでパートナーの、そしてプレイヤーキャラクターの「ピ」に自分の腕を切らせるのである。
これが明らかにおかしい。リストカットというのは自分で自分を傷つけるから自己承認として意味があるのである。自分で自分を傷つけるからこそそこに救済を見いだせるのである。
他人に切らせてもまったく意味がない。
本作がフィクションなのは当然としても、しかしメンヘラに着目したゲームとしてこの間違ったリストカットはありえない。

主人公の「あめちゃん」である「超かわ天使ちゃん」は調子がいい時は「大切な話」として前向きなメッセージというか、なかなかいいことをいう。
そこを見て私はこのゲームにポジティブな印象を持ったのだが、しかし上述のリストカットシーンのリアリティのなさでげんなりした。


メンヘラ女はセックスでそんなに簡単に癒やされるのか?

このゲームのポジティブなエンディングを迎えるのは比較的容易とされる。というのはこの主人公の「あめちゃん」、プレイヤーキャラクターの「ピ」とセックスすることでだいたいストレスが消えて心の闇も解消されるのである。だから配信とセックスを繰り返せばそこそこのいいエンディングに行けるようである。

しかし現実のメンヘラ女はセックスでそう簡単に「治療」されるのかというと大きな疑問がある。
というのは、「メンヘラ界」でよくあることとして、女性の患者にはたいていパートナーがいるが男性患者にはパートナーがいないというのがあるからである。
まあメンタルヘルスの、いや、精神疾患の細かなことを述べるつもりもそもそも知識もないが、どうも女性の患者はパートナーがいるからといって治療につながるわけではないようなのである。


よくできた戯画(カリカチュア)…メンヘラと戯れるべきか、真面目に取り組むべきか?

このゲームについて、IGN Japanに上述の点を含めて、精神疾患に対して真摯に向き合っていないというような批判的な記事が書かれていた。
確かにこのゲームは上述の通りリアリティに欠けているし、精神疾患に対して真摯に向き合っていない。
このゲームは精神疾患の戯画(カリカチュア)に過ぎない。

IGN Japanの記事では戯画化についてどちらかというと批判的に書かれていたわけだが、私はそこまで批判する気はない。
むしろ同じように精神を患っている私はこう思ってしまう。
もはや自らを戯画化するしかないのだ、と。

このゲームはメンヘラの諦念として自らを戯画化したもののように思える。
戯れにより癒そうという絶望的な産物に思える。


絶望的なメンタルヘルスのフィクションとして楽しむのならこのゲームの価値はそこにあるのかもしれない。
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