そして僕は生まれて初めて地面についていない人間を見ることになる。
春になる前の季節、雪は地域的に降ることはほとんどないし、その日も降ってはいなかったけど、僕は降っていて欲しかったと、彼女の家から帰るときに思う。
最近は林檎さんは薬を飲まないと眠れなくて、僕と会った日だけ少ない量で寝れたんだと林檎さんの両親が言う。
でも、あの日は久しぶりに僕が会えなかった間隔が長かった。だから、夕方、起きたら会おうと、電話した。
そして、寝ようとして布団に入り、寝れなくて、何も考えず首を吊る準備を始めた。
彼女は学校をやめてから昼夜逆転の生活を送っていたから、寝るのは朝か昼だ。その日は、運悪く両親共に働きに出ていた。
僕は何も知らない。学校が終わって、自転車をまたいで、彼女の家に向かう。
僕は何も知らない。僕は何も知らない。彼女の家の前に着く。
僕は何も知らない。僕は何も知らない。僕は何も知らない。彼女の家のチャイムを鳴らす。
僕は何も知らない。僕は何も知らない。僕は何も知らない。僕は何も知らない。僕はまだ何も知らない。
何も知らない何も知らない僕は、ドアが開いていることに気づく。
彼女は寝る前にドアを閉める。でも、僕が彼女に家に行った時だいたい彼女を起こしに行く事になるので、両親に黙って僕は合鍵をもらっていた。
「学校から帰ったらすぐ寝ちゃうんだ」、彼女の嘘は可愛く、今になっては虚しい。
彼女の部屋のドアを開けると、排泄物の匂いと、地面についていない彼女の姿が見えた。