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17.4 hrs on record
優しさと愛に満ち満ちたゲーム

ヒロイン3名、それぞれルートが3つ。またそれらとは別に真エンディングが用意されている。
1週が短く、ヒントも提供されるためテンポよくプレイできる。トゥルーエンドや真エンディングへの入り方も、この手のゲームにある程度親しみがあれば迷うことはない。(途中何度か立ち上げっぱなしにしていたため私のプレイ時間は参考にならない)
ストーリーは重厚になりすぎず、しかし軽くもない程よいバランス。考察の余白の残し方が上手く、世界に入りこませつつも深入りさせすぎない。
伏線回収も巧み。周回が必要なゲームだから、というところかもしれないが、同じテキストを読んでいるのに全く違った印象を受ける場面が多々。
キャッチーな百合要素は少ないものの、ヒロインひとりひとりの愛のあり方をいかに受容するかの描写に重点が置かれており、そういった部分を好んで食べる人には大満足のゲームであろう。

その他本は読むけどノベルゲーをあまりやらない人間が嬉しかった点として、場面1つ1つがそう長くないため、ざっとページを繰るくらいの感覚で過去のテキストを参照しにいけること。全体的に優しい雰囲気のテキストで、時に示唆的でもあり、思い出すため、あるいは単にもう一度読みたくなって過去の文章を見返したくなることが多かった。そんなときに何日目のこの辺、で簡単に見に行けるのがとても便利であった。


ゲームの中身についてすきなところ(ネタバレを含む感想)
・(ゲームに提示され、プレイヤーが選んだ選択肢ではなく)主人公であえるヘレナ自身の言葉を用いることがキーになっていること。
 ノベルゲームの選択肢で、選びたいのはそのどれでも無いと思ったことが何度もある。私は私として眼の前の彼女に向き合っているのであって、私が選びたい選択肢、私の考えは今目の前に提示されている選択肢のいずれにもあたらないのに。そんなことを考えながら、妥協と諦観混じりに画面に映る選択肢を選ぶより他ないのだ。
 結局作られたゲームの中の話ではあるのだが、ヘレナがこの構造を打ち破ってくれたことを心から嬉しく思う。


・心中する、首を締める、監禁するなどなど、愛情がちょっぴり歪んだ形で現れる。かつそれはトゥルールートでの出来事である。
 この手の百合が好き、というのは置いておいて。
 トゥルーエンドは単に幸せに終わるのではなく、内に秘められた"まともではない"愛を、あるいは心を、ヘレナ自身の選択によって認め、受け入れ、共にあろうとする物語になっている。
 トゥルールートは選択肢を選ぶことがないためにプレイヤーの意思が介在しない、という意味である種二人きりの世界とも言え、その世界で二人の関係をこのような形で描く構成は非常に巧みである。("壁や空気になって百合を見守る"体験ができる、とも言える)


・死体を埋めるシーンがある
 死体を埋める百合がすきなのですき。


・「Thank you for playing, and knowing them.」で締めくくられること。
最後まで愛に満ちたゲームであることが現れている。あるいはヘレナとマリーの行く末はプレイヤー自身だけが知っている、ということなのかもしれない。




その他(ネタバレを含む感想2)
「神様」「天使」「悪魔」をキーワードにメタフィクション的な構造が提示される。
プレイヤーは神様で天使は主人公。これは事実上ゲーム内で明示される。
で、悪魔はこのゲームそのもの、(あるいはプログラムやエンジン)ではないだろうか。
"この世界を動かしていたのはマリーで、世界はまたマリー自身だった"
"だって私がやっているのは…(中略)…人間のよく分からない言葉を記録して、もっとよく分からない神の世界の言葉に変えることくらいだったから。"
あたりのテキストからそれが示唆されている……ような気がする。
そのうえで、「悪魔が人間に恋をする」とはどういうことか。どこからどこまでが悪魔に制御できる範囲なのだろう。
……考えることは尽きないが、このあまり深く考えなくてよいのかもしれない。
メタ構造を考えることよりも、ヘレナとマリーの愛について考えるのが、きっとこのゲームの本懐であるのだから。
Posted 8 June.
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