カプコンは80年代からアーケードでSTGを数多く制作・発売したメーカーで、中でもボタンを連打してショットを撃ち続ける「連射」を主軸としたタイトルが多かった。
本作『19XX - The War Against Destiny -』は、そのスタイルを引き継ぎながら、敵をロックオンする武器「マーカーミサイル」を駆使して敵を倒す。「連射」と共に「連携」を主軸とした「攻める」ゲームでありながら、難易度はSTG初心者でも抵抗無く遊べる「優しさ」を兼ね備えていた。
そんな本作は、アーケードで1996年に発売されてから25年間、一度もコンシューマーに移植されなかったが、今回『カプコンアーケードスタジアム』でついに初収録された。

また本作は、カプコンがアーケードゲーム参入当初から制作していたSTG「19」シリーズの一つで、本ソフトではシリーズ6作のうち本作を含む5タイトルがプレイできる。
そこでSteamレビューという、多くの方がプレイ感想を書いているこの場で、本作を含むシリーズの魅力と歴史について書いてみたいと思う。

19シリーズ初代『1942』は1984年発売。第二次世界大戦をテーマにしたゲームで、カプコンアーケードゲーム初期の作品だった。
スタート時から海を延々とわたり、画面を飛び交う戦闘機を撃ち落とす、ターゲットを取ってパワーアップする、撃墜率100％を目指してスコアを上げるなど「戦闘」を中心としたもの。
海や大地を延々と進む映像が映し出され、音楽はドラムとホイッスルの音が鳴り響く、今見ると静なで地味の雰囲気すら感じる。

その続編『1943 - ミッドウェイ海戦 -』（無料でプレイ可）は1987年発売。全作から大きく変化して、ゲーム全編にわたって爽快なメロディが流れる、各ステージごとに戦艦に近づいて撃沈させるなど、様々な「戦場の場面」を設けてバリエーションをもたせている。
更に1990年発売『1941 - Counter Attack -』では、ステージの中に港、工場、山岳、街など、更に様々な「舞台」が広がる。

そして1996年発売の本作『19XX - The War Against Destiny -』は、夕日で真っ赤に染まる港、緑に囲まれたジャングル地帯とそこに流れる巨大な滝、真っ白な氷河が浮かぶ極寒の地、真っ暗な夜の街を汽車が走りぬけるなど、舞台が様々な「世界」へと広がる。
そこに突然出現する敵や、あらゆる場面に登場するボスなど、場面ごとに異なるシチュエーションがある、そこに多くの「ドラマ」を感じる演出があった。

つまり19シリーズはタイトルを重ねる度に、舞台が「戦場から世界」へ、ゲームは「戦闘からドラマ」へと広がっていく、それが「19」シリーズの進化だった。

その後、2000年発売『1944 - The Loop Master -』では、舞台がほぼ「戦場」に統一されるなど、『1943』に近い展開となっている。
進化を続けてきたシリーズから「原点」に戻った作品と言える。

『1942』は1984年、『19XX』は1996年と、初代から本作までには12年の隔たりがある。本ソフト『カプコンアーケードスタジアム』はそれらを体験できるのも魅力の一つ。
だが、その歴史は『19XX』単体でも味わうことができる。

このゲームには、ステージ1のみ『1942』の音楽でプレイできるという裏技がある。これはアーケード版に搭載されていたので、当時はゲームセンターでも可能だった。
方法などはネット上でもの様々な場所に掲載されているが、私が改めて書いたのがリンク先の記事。

19XXプレイ日記（4）：19XXの隠し音楽と、そこに見る「19」シリーズの歴史｜つかさん｜note[note.com]

その裏技でプレイすると、世界を舞台にドラマを感じさせた『19XX』に、過去の戦闘のみを表現した『1942』の音楽が流れる、そこに素朴さや違和感を覚えるだろう。それは逆に、2つの作品の間に世界の広がりとゲームとしての進化があったことが感じ取れる。
そんな味わい方も、一つの楽しみであると言える。