Cyberpunk2077は、美しくまばゆい高密度な街 ─ ナイトシティに思うがままに飛び込むことができる。
自身の成長、クエストの進路、敵への対処方法などに関して圧倒的な量の選択肢が用意されており、あなたの決断が、ナイトシティとそこに住む人々に、具体的かつ自然な形で影響を与えることになる。
メインストーリー単体で見ると予想以上に短く、その結末に与えるプレイヤーの影響が少し物足りなくはあるが、CDPRによる緻密なプロットと説得力のある演出によって深い読了感を得られるだろう。
サイドクエストは豊富に用意されており、そのうちの幾つかはクリア後もしばらくは忘れられない体験である。
時折ムードを台無しにする馬鹿げたバグが発生することは残念だが、本作はWithcer3と同じく、オープンワールドRPGのマスターピースとして語り継がれるに値する傑作である。

ナイトシティの傭兵であるVが大昔に死亡したロックスター兼半企業テロリストであるジョニー・シルバーハンドと自身の脳内での共同生活を始めるシーケンスから物語は幕を開ける。
キアヌ・リーブス演じるジョニーは、ひねくれ者で扱いづらく、しかし憎めない純粋性と強い信念を持っている。
ジョニーはプレイヤーの行動に対して頼んでもないのにあれやこれやと口出しをしてくる。さながら、厄介な職場の先輩のような存在である。（その助言が正しく良い結果を生むとも限らない）
ジョニーが数十時間（あるいは数百時間）に及ぶ旅のツアーガイドとして心地よい人物であるとは言い難い。しかしジョニーとVの、対立から始まりやがてかけがえのない理解者となってゆく旅路は、この物語のメインシャフトとして完璧に機能している。

ゲームの舞台となるナイトシティは本作の真の主人公である。単一の都市マップであるため世界中を旅して回るような冒険は望めるべくもないが、非常に密度が高く、多様性に満ち溢れており、そして一貫して美しい。
汚染と犯罪に満ちたスラム、一流企業のオフィスが城下を見下ろす高層ビル街、都市部とは対象的な広々とした砂漠、謎に包まれた奇妙な場所の数々。
ナイトシティの規模と密度はまさに圧巻で、その全てが刺激的な体験である。

本作のサイドクエストの数々は、下らないものから深い感動を呼ぶもの、スリリングなものから強烈にダークなものまで幅広く用意されている。
人によって印象に残るクエストは様々だろうが、ジュディとのスキューバダイビング、ブレンダンという名のAI自動販売機と親友となり─やがて別れる体験は、すぐには忘れられない思い出である。
一方でWithcer3に見られたような、メインストーリーの結末に大きな影響を与えるサイドクエストは存在せず、その意味では物足りなさを覚えた。

実際のところ本作の戦闘はRPGとしての側面が強く、本格的なシューターメカニクスを期待すると肩透かしを食うかもしれない。
敵の頭に10発の拳銃弾を打ち込まないと倒すことができないガンプレイが最初は好きになれなかったが、主人公のビルドが成長するにつれてヘッドショット以外の選択肢が無数に生まれ、やがて夢中になっていた。
本作の戦闘が輝きを放つ瞬間は、ユニークな武器や強力なインプラントを発見し、その味わいを確かめるプレイループにある。
ある銃はチャージショットで壁越しに敵を撃ち抜くことができ、スマートウェポンと呼ばれるハイテク銃は壁の後ろに隠れている敵を追尾して射撃する。
更にインプラントで身体を改造することで二段ジャンプが可能になり、腕から生える凶悪なブレードで街のギャングを人参のように切り刻むことが出来る。
近接戦闘の選択肢は豊富に用意されているが、それほど奥深いものではない。しかし操作性と感触は良好で、最後まで薄ら笑いを浮かべながら楽しむことが出来た。
クイックハックはステルスと戦闘に電脳ハッキングを融合させた本作特有の戦闘スタイルと言える。
敵の眼球インプラントを一時的に機能停止させたり、マルウェアに感染させて脳漿を焼き焦がすことができる。
クイックハックを駆使して、自らの手を血で汚すことなく眼前の敵を殲滅する戦闘スタイルは、ユニークでクールな体験だ。

音楽は全体を通して素晴らしい。車載ラジオのプレイリストにはナイトシティで活動する（設定の）アーティストが制作したオリジナル楽曲が満載となっており、ドライブに彩りを与え、世界観の補強として完璧に機能している。